12限度処理について

限度処理

限度処理は、JD Edwards EnterpriseOne詳細契約請求システムの機能であり、設定する限度額を詳細契約請求契約に適用して、限度額を超える請求または収益認識を行わないようにします。

詳細契約の作成/編集プログラム(P52G01M)で契約を入力する際に、次の2つの金額セットを入力します。

  • 資金調達金額

  • 報酬金額

資金調達金額と報酬金額の両方が次の3つの金額に分かれます。

  • 原価

    契約について完了した作業の原価について請求する金額。タイム・アンド・マテリアル(T&M)、原価加算、総額、単価、マイルストーン、進捗、適用済間接費および間接費請求行を使用して原価金額が計算されます。

  • 手数料

    原価に加えて計算する手数料を請求する金額。手数料請求行を使用して手数料金額が計算されます。

  • 報酬

    特定の報奨が満たされた場合、たとえば作業がスケジュールより早く完了した場合に報酬を受け取るために請求する金額。報酬請求行を使用して報酬金額が計算されます。

契約の金額の設定に加えて、請求書処理および収益認識中に限度が適用されるレベルも指定します。契約の「請求限度」および「Revenue Limit」フィールドを使用して、限度を適用する次の方式の1つを指定できます。

  • Awarded By Line

  • Awarded By Total

  • Funded By Line

  • Funded By Total

  • No Limit

「Awarded By Line」および「Awarded By Total」方式では、限度の適用時に契約の報酬金額が使用されます。「Funded By Line」および「Funded By Total」方式では、限度の適用時に契約の資金調達金額が使用されます。

「Awarded By Line」または「Funded By Line」方式を選択した場合、仕訳の生成(R48132)および請求書の生成(R52121)プログラムは、請求明細ワークファイル・テーブル(F4812)の対応する取引に原価、手数料および報酬限度を別々に適用します。「Awarded By Total」または「Funded By Total」方式を選択した場合、R48132およびR52121プログラムは、F4812テーブルの資金調達レベルのすべての原価、手数料および報酬取引の合計に、契約の原価、手数料および報酬限度額の合計を適用します。

たとえば、原価の資金調達限度額が100,000.00 USD、手数料が10,000.00 USD、報酬が5,000.00 USDの資金調達レベルを設定した場合は、限度が次のように適用されます。

  • 「Funded By Line」方式

    資金調達レベルについては、原価金額で100,000.00 USD、手数料金額で10,000.00 USD、報酬金額で5,000.00 USDのみ請求および収益認識できます。

  • 「Funded By Total」方式

    資金調達レベルについて、合計115,000.00 USDを請求および収益認識できます。

契約の継続期間中のある時点で、契約の1つ以上の限度額を超過することがあります。R48132またはR52121プログラムで限度超過が計算される場合、超過金額の請求または収益認識は許可されません。請求明細ワークファイル・テーブル(F4812)に超過金額のレコードが作成され、レコードの「取引の分類」フィールド(TCLS)に超過した金額のタイプに対応する値が移入されます。限度超過レコードの値は次のとおりです。

  • I: 原価限度超過

  • J: 手数料限度超過

  • K: 報酬限度超過

  • L: 合計限度超過

資金調達レベル契約に対して、超過請求行であるXの請求行タイプ(PRTP)の請求行も作成されます。

超過請求行は次のプログラムで表示されます。

  • 契約請求行詳細の改訂(P5202)

  • 請求行の照会(P5222)

注意: 「契約請求行の照会」フォームの「請求書詳細」ロー・エグジットを使用してプログラムにアクセスする場合は、超過請求行が請求書明細の改訂プログラム(P4812)にも表示されます。

詳細契約請求限度集計テーブル(F52G200)を使用して、累計請求書および収益金額と限度超過金額が追跡されます。収益および請求限度方式を使用すると、買掛金の入力(R48199)および仕訳の作成(R48198)プログラムでF52G200テーブルに次のように新規レコードが作成または既存のレコードが更新されます。

  • 「Awarded By Line」または「Funded By Line」方式

    請求書または収益バッチに含まれる金額のタイプに応じて、資金調達レベルごとに最大4つのレコードが作成されます。たとえば、請求書または収益バッチに原価、手数料および報酬金額が含まれる場合は、3つのレコードが作成されます。この最初の3つのレコードには、累計請求書、累計収益および限度超過金額が原価、手数料および報酬金額に対して別々に格納されます。4番目のレコードには、合計累計請求書および合計累計収益金額が格納されますが、合計限度超過金額は格納されません。

  • 「Awarded By Total」または「Funded By Total」方式

    資金調達レベルごとに1つのレコードのみ作成され、合計累計請求書、合計累計収益および合計限度超過金額が格納されます。

    契約条件またはユーザー・エラーにより、請求または収益限度方式を「Awarded By Total」または「Funded By Total」から「Awarded By Line」または「Funded By Line」に変更することが必要な場合があります。すでに資金調達レベルの請求書を生成または収益を認識した場合は、F52G200テーブルのレコードに格納されている金額が原価金額とみなされます。次に資金調達レベルの請求書を処理または収益を認識するときに、F52G200テーブルの原価金額レコードに以前の合計金額が移入されます。

顧客から最終的に契約の追加報酬および資金調達金額を提供されることがあります。契約を変更して新しい限度額を反映すると、次に請求書を生成または収益を認識するときに、超過として保留されていた金額のすべてまたは一部が含められます。

注意: P52G01Mプログラムで契約限度金額を変更すると、F4812テーブルで契約の現行収益金額が確認されます。契約の現行金額が見つからない場合は、金額のないレコードが契約のF4812テーブルに追加されます。R48132プログラムを実行すると、これらのレコードは、契約で収益限度額に対する変更を確認するようシステムに指示することになるため、契約の超過金額が含められます。

詳細契約請求限度集計照会プログラム(P52G200)を使用して、各資金調達レベル契約のF52G200テーブルに格納されている情報を検討できます。

収益認識のリスク金額

報酬および資金調達金額に加えて、契約にはリスク金額を含めることもできます。契約のリスク金額は、顧客から追加の資金調達がまもなく使用可能になると通知されたときに設定できます。実際の資金を受け取る前にこれらの金額の収益を認識できるようにするには、金額を契約に追加します。R48132プログラムを実行すると、収益金額の計算時にリスク金額が含められます。

例: 請求の限度処理

この例では、請求書レベル100を含む、2007年1月の契約番号1000を設定します。請求書レベル100には資金調達レベル101が含まれます。2008年1月より前に、資金調達レベル101について顧客に複数回請求しました。2008年2月の資金調達レベル101の請求書を処理する際に、原価、手数料および報酬金額を超過しました。超過金額の超過請求行が作成されます。2008年3月に、資金調達レベル101について追加の資金調達原価および手数料金額を受け取ります。2008年3月の請求書を処理し、顧客に超過金額として保留されていた金額の一部を請求します。

契約の設定

次の表に、詳細契約の作成/編集プログラム(P52G01M)で資金調達レベル101に対して設定した請求限度方式および契約限度額を示します。

請求限度方式

原価限度

手数料限度

報酬限度

合計限度

Funded By Line

1,200,000.00 USD

300,000.00 USD

10,000.00 USD

1,510,000.00 USD

2008年1月までに請求された累計金額

次の表に、資金調達レベル101について顧客に請求した累計金額を示します。

累計原価金額

累計手数料金額

累計報酬金額

累計合計

1,150, 000.00 USD

275,000.00 USD

9,750.00 USD

1,434,750.00 USD

2008年2月の請求書金額

2008年2月について請求書の生成プログラム(R52121)を実行すると、F4812テーブルの取引から資金調達レベル101の次の請求書金額が計算されます。

現行原価金額

現行手数料金額

現行報酬金額

総計

150,000.00 USD

40,000.00 USD

2,000.00 USD

192, 000.00

契約限度までのみ請求できます。次の表では、請求する金額、超過金額およびこれらの金額の計算方法を示します。

金額タイプ

請求する金額の計算

(契約限度 - 累計請求済金額)

請求対象金額

超過金額

原価

1,200,000 − 1,150,000

50,000.00 USD

100,000.00 USD

手数料

300,000 − 275,000

25,000,00 USD

15,000.0 USD

報酬

10,000 − 9,750

250.00.00 USD

1,750.00 USD

現在の原価、手数料および報酬金額は契約限度を超えているため、R52121プログラムでは、資金調達レベル101の超過請求行が作成されます。売掛仕訳の作成プログラム(R48199)を実行すると、F52G200テーブルに超過金額のレコードが作成されます。請求限度は「Funded By Line」であるため、超過した金額タイプごとに別々のレコードが作成されます。次の表は、F52G200テーブルに作成されるレコードを示しています。

価格タイプ・グループ

累計請求書

累計請求書超過

C

(原価)

1,300,000.00

−100, 000.00

F

(手数料)

315,000.00

−15,000.00

A

(報酬)

11,750.00

−1,750.00

T

(合計)

1,626,750.00

(限度方式が「Funded By Line」であるため、このフィールドは移入されません)

注意: 価格タイプ・グループTのレコードが作成されるため、請求限度を「Funded By Total」に変更すると、合計金額を含むレコードが存在します。「Funded By Line」請求限度の使用を継続する場合、このレコードは使用されません。

受領した追加の資金調達金額

2008年3月に、資金調達レベル101について、資金調達原価金額に対して90,000.00 USD、資金調達手数料金額に対して15,000.00 USDを追加で受領します。次の表に、変更した限度額(報酬金額は変更なし)を示します。

原価限度

手数料限度

報酬限度

合計限度

1,290,000.00 USD

315, 000.00 USD

10,000.00 USD

1,510,000.00 USD

P52G01Mプログラムで契約限度金額を変更すると、F4812テーブルで資金調達レベル101の現行金額が確認されます。資金調達レベル101の現行金額が見つからない場合は、F4812テーブルにプレースホルダ・レコードが作成されます。R48132プログラムでは、これらのレコードを使用して、前月に作成された資金調達レベル101の超過金額が処理されます。

資金調達金額を変更した後で、3月の請求処理を開始します。R52121プログラムを実行した場合、資金調達レベル101の現在の原価または手数料金額は計算されません。したがって、F4812テーブルに作成されたプレースホルダ・レコードは、資金調達レベル101の契約マスターで新しい金額を確認するためのインディケータとして使用されます。R52121プログラムでは、新しい限度額がF52G200テーブルの超過金額と比較され、請求書が作成されます。次の表に、システムで使用される計算と請求書金額を示します。

金額タイプ

請求書金額

原価

90,000.00 USD

手数料

15,000.00 USD

R48199プログラムを実行すると、次の表に示すように、F52G200テーブルで資金調達レベル101のレコードが更新されます(報酬レコードは更新されません)。

価格タイプ・グループ

累計請求書

累計請求書超過

C

(原価)

1,300,000.00

–10, 000.00

F

(手数料)

315,000.00

ブランク

T

(合計)

1,626,750.00

ブランク